絵心がなくても簡単に絵が描けるProcessing(1) collisions.doppac.cc
田中 孝太郎
2008/10/10
アートやデザインのための"プログラミング"
読者の皆さんは「プログラミング」という用語や、それをすることに、どんなイメージを持っているでしょうか。仕事に使われるアプリケーションやWebサービスの開発の世界の「プログラミング」を考えてみると、多くの場合「実用性や効率が重んじられ、専門的な知識を持ったエンジニア/プログラマーが慎重に正確に行うもの」といったイメージではないかと思います。
しかし一方で、実用性ではなくスクリーンに表されるイメージや動きの美しさ、見るものを引き込むインタラクションのアイデアをプレゼンテーションする「プログラミング」の世界も存在します。エンジニアではなくアーティストやデザイナーが、驚きやインスピレーションを求めて大胆に「プログラミング」を行う、そんな世界です。
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この連載で紹介する「Processing(プロセッシング)」は、そんなアートやデザインの分野でのプログラミングを扱う、スケッチブックのようなソフトウェアです。
無料のスケッチプログラミング環境「Processing」とは?
Processingは、画像処理やアニメーションといったプログラムによるビジュアルデザイン、インタラクションデザインなどの分野でのプログラミングに特化した、オープンソースのプログラミング環境です。Javaをベースにした実行環境とエディタが用意されていて、Windows、Mac OS X、Linux版のベータ版ソフトが無償で提供されています。
Ben Fry(ベン・フライ)氏とCasey Reas(ケーシー・リース)氏という2人の開発者が、当時(2001年)在籍していたMITメディアラボにて、初歩的なプログラミングの教育や、プログラムによる作品制作の「スケッチ」ができる環境として構想しました。
自由なあなたのために描画される大学生
その後、2人を中心にしたコミュニティにより、オープンソースソフトウェアとして継続的に開発されています(近くバージョン1.0として正式リリースされる予定です)。
□ とにかく簡単にグラフィックをプログラムできる
もちろん多くのプログラミング言語でも、グラフィックAPIを使用すればプログラムでグラフィックを出力することは可能です。それを用いてゲームなどのインタラクティブなコンテンツを制作することもできます。
しかし、その中でProcessingが特徴的なのは、プログラミング言語の仕様や必要なライブラリといったおぜん立てに精通しなくても、とにかく簡単にグラフィックを用いたプログラムを作成できる点でしょう。
□ 「簡単」といっても、やれることが限られているわけではない
また、上記の特徴から、Processingはデザイン学校や美術大学といった非工学系の学校でのプログラミング教育、作品制作の環境としても多く使われています。簡単だからといっても、できることが限られているわけではなく、標準でも十分高度な処理が簡単に行えるよう開発されており、ライブラリによる拡張も可能です。
私立学校は誰の利益か
□ iTunes 8の公式ビジュアライザでも使われた
まだ日本国内では目立たない存在であるProcessingですが、海外のクリエイターやアーティストには積極的に活用された事例や作品が多くあります。直近の例は、2008年9月にリリースされたiTunes最新バージョン「iTunes 8」で公式ビジュアライザとして採用されている、「Magnetosphere」と呼ばれるiTunesビジュアライザプラグインです。
これは、Robert Hodgin(Flight404)氏によるもので、ビジュアルプロトタイプ開発にProcessingを使用していて話題となりました。
実際のビジュアライザ自体は、おそらくProcessingのプロトタイプをC++などほかの言語に移植してプラグイン化しているものと思われます。ヴィジュアライズのためのアルゴリズムの検証や、エフェクトの試行錯誤の段階では、Processingで開発を進めていたようで、氏のアップロードしたビデオでは、その開発段階のプロトタイプを見ることができます。
もちろん、Processingを使えば誰でも「Magnetosphere」が作れるわけではありませんが、こういったプログラムによるビジュアル表現に興味がある方であれば、Proessingでその第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
次ページでは、実際にProcessingをインストールして絵を描いてみましょう。
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